いまもなお、文化財の指定のあるなしにかかわらず、無数の伝統建築で修理工事や補強工事がおこなわれています。とくにあの阪神・淡路大震災のあとは、耐震補強される例が増えてきました。そのいくつかの補強計画にたずさわってみて、構造の観点からの安心感をもつと同時に、鉄骨でがちがちに補強された伝統建築を痛々しく思う気持ちがわいてきます。ひとつとして、これが最善の補強方法だと満足できたものはありません。文化財など、古いものを修理したり補強したりするのは、永遠に試行錯誤なのかもしれません。
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現在の構造または耐震補強は、とうぜん近代科学の産物のひとつである構造解析・設計技術にもとづいておこなわれます。伝統構法を現代構造学で解析するのは、懐石料理をナイフとフォークで食べるような違和感があります。しかし、現代人の求める安全性を確保するためには、それしか方法がありません。現在の構造設計技術は、現代的な建物を新築するときに適用されることを前提としてできているので、伝統構法のような既存の建物の補強設計には、かならずしもしっくりしない面があります。したがって、現在の設計技術で補強することは、多かれ少なかれ無理があります。